2019/07/18

働き方改革のためのツール

ちょっと古い話題ですが、google の jamboard アプリが素晴らしかったという話です。


場所に依存しない働き方ができれば、もっと生活が豊かになると思ってはや何十年。インターネットの時代になってからは、そろそろ実現するか、もう実現するかと思っていましたが、ようやくツールが出揃ってきたように思います。

一つはクラウド。メールとファイルがすべてクラウド化されたことで、「社内LANのファイルサーバー」が無くなり、その結果物理的に社内LANに繋がっている必然性が無くなりました。今、まだ僅かにクラウドが許されないお客さんのデータはローカルなのですが、それ以外の全てがクラウド化されています。

自分達が日々利用する端末にはもう巨大なストレージを持つ必要が無く、クラウドストレージは部分的にミラーリングされ、暗号化された状態でローカルに置かれています。クラウドアカウントが繋がってはじめてそれらを使って作業ができます。このことは、物理的にローカルストレージに置かれたファイル群よりもよほど高いセキュリティに守られていて、しかも、クラウド事業者は世界最高水準のプロなわけですから、私達は私達のプロフェッショナルな領域に集中することができます。

もう一つは遠隔コミュニケーション。主にビジネスコミュニケーションにおいて重要な共有は、①音声共有、②表情、しぐさの共有、③ドキュメント共有ではないでしょうか。①は電話が長らくビジネスコミュニケーションのメインツールでしたが、②と③が重要な場合は対面である必要があります。これをどのように乗り越えたかが、遠隔コミュニケーションの進化の軌跡になります。
今から思うと、Skypeが②のブレイクのきっかけでした。それまでもテレビ会議システムということでカメラ映像と音声とを同時に共有する仕組みはありましたが、それは既に設備が配置してある拠点間でしか利用できなかった。Skypeはこれを、だれでも持っているPCで実現したんですよね。PCがインターネットに繋がってさえいれば、誰とでも対面通話ができる。これで遠隔のコミュニケーションが一気に楽になりました。今ではZoomなどの専用サービスもたくさんあって、それぞれが使いやすさを追求しています。多拠点間通信もできるようになりました。もう、わざわざ物理的距離を超えて行く必然性は少なくなってきています。

③のドキュメント共有には二種類あって、一つは静的ドキュメントの共有、これは、事前に資料を配布したり、それをみながら解説したりというところで、パワポの画面を移しながら一方的に話すような会議ならばこれで十分。SkypeやHangoutなども画面共有の機能は持っているので、画面を見ながら講義や解説をすることは、数年前から十分できる用になっていました。

ただ、最後まで残っていたのが、動的ドキュメントの共有でした。これは簡単に言えばホワイトボード共有のことです。技術的にはさほど難しくはないのに最後まで残った理由は、おそらくニーズがあまり顕在化していなかったからでしょう。多くの会議は対面での会話のみ、もしくはドキュメントを解説するだけでほぼ完結するようなものなのではないでしょうか。それに対して、動的ドキュメント共有では、これを中心にして参加者全員がコラボレーションするような場面が思い浮かびます。

そこに登場したのが、Google の jam board と、Microsoft Office 365 の Whiteboard です。MS Whiteboard は何年か前に使ってレポートした気がします。そこそこ使えましたが、Office 365 が必須という点が厳しかった。一方で、jam board は、数十万円~100万円ほどもする巨大な「jam board」が必須で、これも辛い。と思っていたら、実は ipad jamboardアプリがあって、これを使えばいつでも ipad が jamboard になることを発見。しかも、複数の ipad 等で共有でき、持っていなくても google account があれば(個人向けでもOK)ブラウザで閲覧編集できる。操作性は ipad + apple pencil が最も使いやすいのですが、我慢すればPCのブラウザ+マウスでもなんとか使える。

ということで、③もクリアし、遠隔コミュニケーションに必要な道具は一通り揃いました。あとは人が慣れるだけです。

ちなみに、jamboard アプリ、更新履歴をみるともう二年ほど前から出ているんですね。全く知りませんでした。jamboard はあの高価なディスプレイがないと使えないと思っていた。代理店さんとも何度も話したことがあるのに、一切教えてくれなかったのは、これが見つかると jamboard が売れなくなるからなのだろうか、と穿ってみてしまうくらいに、ipad のjamboard アプリはよくできています。ipad + apple pencil を持っている人は今すぐ試してみてください。

もう一つ、ちなみに。今から20年ほど前、私がまだ大学院生だった頃、この jamboard と全く同じ事を考えてたことがありまして。当時は数学科の学生だったので、議論のベースは黒板なんですよね。何人かで黒板をみながら、それぞれ書き込みながら、あーだこーだと議論するのが日常でした。そんなとき、よく議論をしていた先輩が遠方の大学に行くことになって、電話で議論しても数式が書けないとなかなか辛いですね、と話ながら、ちょうどwindows 95がでてしばらくでしたので、パソコン通信上で黒板を共有できたらいいんじゃない?って話をしていました。某企業に作ってくれと電話したところ、軽くあしらわれましたが。それがやっと、20年越しにまともに使えるツールが出現してきたわけで、今の数学科生はこれを使って、いつでも、どこにいても、誰とでも、数式を使ったリアルタイムコミュニケーションができるわけです。すばらしい時代になったと思う反面、ここまで来るのに20年もかかったのだなとも思います。