2019/08/27

Weworkに移って半年の感想(ワークスペース編)

昨年の3月にオフィスをWework四谷に移しまして、それから半年経ったので感想を書きます。

なにかと話題のシェアオフィスなので、良いも悪いも様々な話題がネット上で飛び交っているような気がします。今回、これを書こうと思い立ったのも、wework japanの公式twitterアカウントが批判(というより誹謗中傷に近い)ツイートをRTしていて、これは援護射撃してくれってコトなのかな?と思ったからなのですが、中にいないと分からないこともあるし、中にいたとしても立場や状況によって見方がかなり変わるので、一つの利用者ケースとして書いてみようと思います。

さて、ウチが入居したのは四ツ谷駅目の前にあるWework東急四谷。ビルの3Fから9Fがweworkで、フルで1500人規模だそうなので、かなり大きめの拠点だそうです。新規開店だったので移転の意思決定したときはまだ内見などができず、別の拠点を見て決めざるを得ませんでした。その時に案内されたのが日比谷のweworkで、内階段をかなり推されたのが印象に残っていたのですが、なんと四谷には内階段がない!

という最初の躓きはあったものの、2月末に入居手続き、その時はまだ内装工事中でしたが、2019年の3月頭に入居となりました。まずはこの入居フェーズ。参考までに、今回移転した人数は8人、確保した居室は9人部屋です。

入居にあたっての契約は、不動産賃貸契約ではなく、あくまでもサービス契約です。よって、普通にオフィス賃貸を借りるとついてくる敷金、礼金などはありません。また、何ヶ月分を前金でというのもありません。但し、保証金のようなものは二ヶ月分だけ預けます。もしウチがバックレたときは召し上げられますが、円満に退去すれば戻ってくるはずですので、つまり、使った月数だけの支払になります。

また、内装工事は不要、というか、不可です。その前に、契約形態がありますね。いくつか種類があって、普通にオフィスとして使うのならば、占有スペースのあるプランになります。(その他は公式情報等を参考に。)占有スペースでは基本的にはあるものをそのまま使います。机と小物入れと椅子が標準装備されていて、それ以外のものは持ち込みますが、占有スペースは小さいのであまり沢山のものは持ち込めません。 ウチは仕事柄、書籍を沢山持っていたのですが、いまは段ボール箱で20箱ほどをトランクルームに預けています。書類なども置いておくのは凄くコスパが悪いので、重要書類はともかく、そうでないものはスキャンして廃棄するか、トランクルーム行きです。つまり、weworkに移転すると強制的に断捨離できます(笑)。(自分のノートPCだけもって移転してくるのが理想ですが、会社の本部を移すには書類で持っておかなくてはならない面倒なものがいくつかあるので、最低限それだけは持ってきました。将来は全部クラウド化して、本当にノートPC一枚で移転できたらいいですね。)

このように、一般に、ある程度年数の経った企業のオフィス移転では敷金、礼金、内装、引っ越しの費用を全部合わせると数百万円~千万弱かかるものですが、これがほとんど不要です。さらには、賃貸契約では退去時の原状復帰にも数百万円かかりますが、これも不要。weworkは高いとよく言われていて、確かに月額利用料だけ見ると高いのですが、この初期費用、退去費用が無くなる分は考慮すべきポイントだと思います。さらには、内装をするには設計から施工までの面倒をみなきゃならなかったり、普通の移転には意思決定者には様々な雑用が舞い込んできますが、wework(というよりシェアオフィス)にすることで、そういった様々な雑用から解放されますから、そういうのが好きな人ならいいですけど、私はどちらかというとそういう用事は誰かに任せて自分の仕事をしたい方なので、weworkはめちゃめちゃ楽でした。

さらに費用面。トイレやパントリー、受付、ラウンジ、会議室、プリンタは共有です。水道光熱費は月額サービス料に込み、プリントと会議室はチケット制で、一定量のチケットもサービス料に含まれています。また、トイレやパントリーを含む共有スペースの掃除、ゴミ捨て、ビルメンテナンス関連、コーヒーやお茶、氷、ミルクの用意と片付け、これらがすべて付属しています。よく、weoworkといえばタダでビールが飲めるというところばかり喧伝されていますが、最も多く消費されるのはおそらくコーヒーだと思います。(なお、私自身はアルコールNG。)オフィス専用のマグカップが毎日大量に使用され、洗ってもらっていますが、これらの費用もサービス料に入っています。よって、これまで基本的にはほぼ月額のサービス費のみです。たまに追加の会議室利用料がかかるくらい。

さて、これを高いとみるか、安いとみるか。ウチは7人+外部協力2名の9人で月額100万円程度になっていますが、引っ越し前は渋谷のそれなりに駅近にいたので、坪単価がおよそ3万円、スペースをかけて、60万円~70万円程度が家賃+オフィス維持費のみにかかっており、これに様々な諸経費を入れると、90万円くらいにはなっていましたので、実はそんなに大きく変わっていません。


但し、これは会社の事業内容やフェーズにも寄ると思います。できたてほやほやのネット系スタートアップで、まだ収益化の道が見えていないフェーズならば、こんなに高額をオフィスに費やすのはリスクが高すぎる。マンションの一室で始めれば月額10万円~20万円程度でもいける。ウチも最初はそうでしたし、固定費はできる限り削った方がいいし、創業メンバーが手間暇掛ければできることならばそれは自分でやった方がいい。ただ、年数が経ってくるとそれではだんだんやっていけなくなる最初のポイントは、従業員の増加です。創業メンバーなら、株も持っているし、自分が我慢した分だけ会社の内部留保が増えていくので、劣悪な環境でもいくらでも我慢できますが、被用者はそうではないです。また、事業が軌道に乗ってくればお客さんとの会議も増えますが、お客さんに靴を脱いで上がってもらったり(和風内装除く)、ユニットバスのトイレを使ってもらったりするのは、駆け出しのベンチャーならまだしも、ある程度稼いでいる、年季の入った会社では敬遠されそうです。

ちなみに、個人的にはオフィスグレード Point Of No Return はトイレだと思っています。自分も、従業員も、一度グレードアップすると、二度とその前のトイレには戻れません。ポイントは、トイレがオフィススペースから離れていて、男女が別れていること。次に、清潔さ、明るさと、ウォシュレット。これ、かなり重要です。少人数のオフィススペース探しはこれが意外に難しくて、フロア貸しだとトイレが男女共用だったり、別れていてもオフィススペースとの間の仕切りをある程度しっかり取る必要があったり(その分、ワークスペースが減る)。あとは選択肢として、共同トイレの雑居ビルか、それともweworkのようなシェアオフィスになってきます。ウチの移転ではトイレを最優先課題と考えていましたが、結局トイレのグレードはそのまま坪単価や人単価に跳ね返ってきます。(逆に、古い物件でもトイレをめっちゃキレイにしたら坪単価を上げられると思うんだけれどどうだろう?)

あと、ウチとは違いますが、他の入居者の皆さんを見ていて思うのは、短期間でチームを作ってワークスペースを確保し、成果を出したらリリースするという仕事の形式に合うなと思いました。例えば、自社ビルの建て替えの間だけとか、あるシステムの開発の間だけとか。weworkは決してベンチャー企業だけのものではなくて、むしろこういう利用の方が多いんじゃないかってくらい、中規模~大規模の企業のテンポラリワークスペースとして活用されているように思います。例えば、開発プロジェクトなどでエンジニアをひとり調達すると100万円~200万円/月になりますが、そのうちざっくり10万円がワークスペース費用になると思えば、実は大した経費ではないです。これって、クラウドと同じですね。データセンターに自前のサーバーをたてるか、使いたいときに使いたいだけのマシンパワーを用意するか。前者はその分のリスクを自分で持つし、後者は単価は高いけれど低リスクで運用も保守も全部やってくれる。使いたいときと言うのは、収益が上がるときだから、それに直接付随するコストはほぼノーリスクです。こういうサービスは、導入費用、事後費用、保守費用の他に、リスクをちゃんと計算に入れないと見合わないようになっていて、但し、全部入れ込むとどちらもそんなに変わらない結果になります。私は自分の住居は買わずにずっと賃貸暮らしなのですが、不動産を買うというリスクを引き受ける気が無いので、いくら買った方が安いと言われてもその気になりません。買ってしまったせいで失う選択肢の価値の方が大きい。それと同じで、自社ビルか、賃貸契約か、オフィスサービス契約か、この順で単価は高くなるのですが、それは引き受けているリスクと反比例しているんですよね。このリスクをちゃんと算入しないと、よく言われるように「高すぎる」という評価になると思います。まぁ、それでも高いですけど。

他には、外国籍っぽい企業さんも多いです。ラウンジでは常に日本語ではない言葉が飛び交っていますが、もしかしたらこれは日本の「賃貸契約」の仕組みが合わないのかな、と思ってみたり。圧倒的にweworkの方が契約が楽ですし、契約書類も英語と日本語が最初から用意されていて、連帯保証人などというわけわからんものも要求されませんから、日本的賃貸に慣れていない人にとっては、wework(もしくはシェアオフィス)は数少ない選択肢なのかも。

あ、もう一つ、公的機関の出先っぽいところがいくつかあるのも特徴かもしれません。これは単年度予算の関係でしょうか?使う間だけの契約をすれば良いのは、単年度予算に合いますね。
 
さて、ここまでの話は、実はweworkでなくとも、他のシェアオフィスでも同じように当てはまるところだと思います。weworkは高いけれど、ワークスペースの価値としてみたらそうでもないです。ただ、安くもないので、収益化の目処が立っていないベンチャーにはリスクが高いと思います。小規模事業者なら、ある程度売上が立っていて、営業に出やすい駅近希望で、よくお客さんが来訪して、トイレに気を遣うレベルの従業員ホスピタリティを求められるようになってきていたら、選択肢の一つだと思います。

でも、実は他のシェアオフィスはもうちょっと安い。某おしゃれなシェアオフィスと比べても2割増しくらいのイメージ。その差額はコミュニティ機能にありそうですが、長くなってきたのでまた今度。

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